最近、日本でも「昆虫食」という言葉を耳にする機会が増えてきましたよね。
ニュースやテレビ番組、さらにはスーパーでも昆虫を使ったスナックを見かけることがあります。
私も最初は「えっ!? 虫を食べるの!?」とびっくりしましたが、実はこれ、世界的に注目されている未来の食文化なんです。
国連の予測によると、2050年までに世界の人口は現在よりも約30%増え、98億人に達するとも言われています。
そうなると、今のままの食糧供給では足りなくなってしまう可能性があるんです。
肉や魚、大豆などのタンパク源に代わるものとして、栄養価が高くて環境にも優しい「昆虫」が脚光を浴びているわけですね。
そして、この「昆虫食」がすでに日常的に根付いている国のひとつが、私が現在住んでいるタイです。
タイ人の知り合いに「昆虫って食べることある?」と聞いてみたところ、「絶対に無理!」という人が約半分、「まあ食べたことはあるけど、特に好きじゃない」という人が2割、そして「美味しいし大好き!」という人が3割くらいでした。
タイでも昆虫食は一般的に食べられるものではなく、地域や世代、個人の好みによってかなり差があります。
しかし、これからの時代、昆虫が私たちの食卓に並ぶ日も遠くないかもしれません。
というわけで今回は、タイの昆虫食の種類、日本人に人気のお土産や昆虫食スナックについて見ていきましょう!
タイの昆虫料理
タイでは、いろいろな昆虫が料理に使われます。
使われる虫は地域によっても違いますが、ここでは昆虫食でよく使われる食材についてまとめてみました。
メガチョーン
見た目は小ぶりで、揚げるとまるで小エビの唐揚げのような感じになります。
東北部のイサーン地方でよく食べられていて、私も旅行でイサーンを訪れた際に挑戦しました。
味はエビとナッツの中間のような感じで、香ばしさが印象的です。
スパイスと一緒に炒められていて、おつまみにぴったり。
地元の人たちは本当に普通のお菓子感覚で食べていました。
ハチの幼虫「カイプン」

私が一番驚いたのは、市場で売られていた「カイプン」と呼ばれるハチの幼虫。
これ、タイでは昆虫食の中でも特に高級な部類に入るそうです。
ハチの子は日本でも長野県などで「へぼ」や「スガレ」として親しまれていて、郷土料理として有名ですね。
私の父も子どもの頃、あったかいご飯の上にハチの子を乗せて食べていたそうで、懐かしそうに話してくれたことを思い出します。
タイの市場では、なんとハチの巣ごとドン!と売られています。
巣のまま焼かれていたり、生のまま売られていたりするので、初めて見たときはその豪快さに圧倒されました。
現地の人に聞いたところ、新鮮なものは生でも食べられるとのこと。
私はさすがに生では試せませんでしたが、焼いたものを少しだけ味見してみました。
その味はというと……想像していたよりずっと濃厚で、ほんのりミルクのようなコクがありました。
日本で食べた白子やアン肝に近い感じ。クセは少なくて、意外にも食べやすかったです。
面白いのは、ハチの子をバナナの葉で包んで焼くスタイル。
これがまた香ばしくて美味しいんです。
手のひらサイズの巣の塊が日本円で500〜600円くらい。
ちょっと高いけれど、栄養価も高くて、ハチミツが残っている部分はほんのり甘く、子どもたちにも人気なんだとか。
地元の人は、おやつ代わりに子どもに食べさせることもあるそうです。
自然の恵みを大切にするタイらしい食文化だなと感じました。
チンリッド
私が昆虫食に最初にチャレンジしたのがこの「チンリッド」、つまりコオロギです。
屋台で揚げたものを見つけ、「思い切って一匹だけ」と買ってみました。
塩とガーリックで味付けされていて、見た目に反して香ばしく、サクサクの食感。味はナッツに近く、クセはまったくありませんでした。
ビールのおつまみにちょうど良い感じで、思わず追加でもう一袋買ってしまいました。
最近では、コオロギを粉末にした「コオロギパウダー」が使われたプロテインバーやスナック菓子も登場していて、健康志向の若者にも人気があるそうです。
タカテーン(バッタ)
コオロギの次に挑戦したのが「タカテーン」、つまりバッタです。
こちらはコオロギより体が大きめで、屋台では頭や足、羽を取り除いてから揚げて売られています。
塩とガーリックの味付けは同じですが、こちらは少しパリッとした食感が強くて、噛むとナッツのような香ばしさが広がります。
見た目に少し抵抗がありましたが、食べてみると本当にクセがなくて驚きました。これもビールと相性抜群です。
カイ・モッ・デーン(赤アリの卵)
もうひとつ、私が好きな昆虫料理は「赤アリの卵」です。
タイ語では「カイ・モッ・デーン」と言います。
「えっ、アリの卵?!」と最初は耳を疑いましたが、これがまた驚くほど繊細な味わいでおいしいんです。
タイの赤アリは、日本の小さなアリとはまったく違います。
体長は1cm近くあることもあり、日本で見かける最大級のアリより一回り大きく感じました。
この赤アリたちは木の上に葉っぱで巣を作り、その中に卵を産みます。
タイの農村では、竹の棒などで木の上から巣を落として採ることもありますが、私は市場で購入しました。
アリの卵は短い旬のごちそう
赤アリの卵は、2月から5月にかけてしか手に入らない希少な食材です。
しかも「卵」として売られていても、実際には幼虫や蛹も混ざっています。
時間が経つと中で孵化が進んでしまうのか、形状はバラバラです。
私が食べたのは、卵焼きに赤アリの卵を混ぜた料理でした。
調理法としては、まず卵と調味料(私はオイスターソースとナンプラーを使いました)を混ぜて炒め、仕上げに赤アリの卵をサッと加えて軽く火を通すのがポイントです。
食べてみると、プチプチッとした独特の食感のあとに、濃厚でトロッとした舌触り。微かに甘みがありつつも、ほんのり苦みと酸味も感じられて、まるで「白子」のような贅沢な味わいでした。
そんなわけで、赤アリの卵は売り場に並んでもすぐに売り切れてしまうため、予約して購入する人も多いそうです。
メンダー(タガメ)
これだけはどうしても勇気が出ませんでした…。
全長5〜7センチもある大きな虫で、屋台で見かけたときは思わず後ずさり。
地元の人に聞いたところ、羽と頭を取って、お腹の部分をチューチュー吸うのだとか。
果物のようなフルーティーな香りがあるそうで、「ナムプリック・メンダー」というディップにも使われています。
実際に香りだけ嗅いでみたら、意外にも爽やか。
でも、食べる勇気は出ませんでした。
ロッドゥアン(カミキリムシの幼虫)
初タイ旅行で、市場でよく目にする昆虫たちを見て、ゾッとしたことを思い出します。。
イモムシ、バッタ、コオロギ…まさかこれが食べ物だなんて。
でも、そんな私の固定観念を打ち破ったのが、「ロッドゥアン」でした。
これは日本語で「タケツトガ(竹虫)」の幼虫で、竹の節の中で育つそうです。
タイでは驚くほど人気で、屋台でも市場でもよく見かけます。
ロッドゥアン(竹虫の幼虫)
知り合いのタイ人の家に招かれたときのことです。
「おやつにどうぞ」と出されたのが、黄金色にカリッと揚がったロッドゥアンでした。
内心「やばい…」と思いながらも、せっかくのご厚意なので思いきってひと口。
…びっくりしました。
サクサクしていて、香ばしく、まるで上質なスナック菓子。
味はほんのり塩気が効いていて、ナッツのようなコクも感じられます。
見た目こそインパクトがありますが、口に入れると「虫を食べている」違和感がほとんどなく、むしろ「おいしい!」という気持ちが先に来ました。
タイの友人たちも口をそろえて「ロッドゥアンは別格だよ」と言います。
普段は虫を食べないという人ですら、これだけは好きという人も少なくありません。
ほとんどのタイ人が食べるというのも、うなずける話です。
思わぬお土産にびっくり!
あるとき、日本に一時帰国することになった私に、日本に以前住んでいたことがあるタイ人の知り合いが「これ、日本でも喜ばれるよ」
と言って紙袋を渡してくれました。
中身は瓶詰だったのですが、私の語学力がまだ不十分で、「ノーマイ(タイ語でタケノコ)」という単語しか聞き取れず、「ああ、タケノコの加工品だな」と思い込んでいました。
ところが、家に帰って瓶を開けてみてビックリ。
中には素揚げされたロッドゥアンがぎっしり!
思わず「ぎゃーっ!」と叫んでしまいました(笑)
でも、これはタイでは高級食材で、1瓶で2,000円以上することもあるとか。
ただ…日本でこれを誰かに渡しても、喜ばれるかどうかはかなり怪しいですよね。
トワマイ(蚕のさなぎ)
これは予想外に美味しかったです!
見た目はちょっとグロテスクですが、揚げるとクリーミーでナッツのような味わい。
塩とガーリックで味付けされていて、フライドポテトにも似た味わいで軽いおやつ感覚で食べられます。
東北部では特によく食べられていて、地元のおばあちゃんに「栄養があって元気になるよ」とすすめられました。
たしかに、タンパク質豊富でヘルシー。
ちなみに、コオロギやオケラよりちょっと高級なんだとか。
メンイーヌーン(フンコロガシ)
…これは、一瞬見ただけでギブアップでした。
スープにして食べることもあるそうですが、あの「糞を転がす虫」と聞いた瞬間、どうしても口に入れる気になれませんでした。
地元の人にも「これは試さなくていい」と言われたので、今回は遠慮させてもらいました(笑)
他にも、サソリやカブトムシなどを食べる文化もあるようです。
実は、友達の家族が今年飼っている「ゴホンツノオオカブト」が食用にもなると知っていて驚きました。
昆虫スナックはお土産になる?!
一方で、もっと手軽に楽しめるのが「昆虫スナック」です。
最近ではタイのセブンイレブンなどのコンビニでも、ポテトチップスの棚に並んでいるのを見かけます。
「ポテチと同じくくりか…」と初めて見たとき驚きながら、袋に入った素揚げの昆虫たちをまじまじと眺めていた時のことを思い出します。
私が初めて見たときは、コオロギ、オケラ、蚕の蛹(さなぎ)、そしてイモムシのスナックがありました。
それぞれ小さな袋に入っていて、1袋あたり20バーツ(日本円で約70円)ほど。
軽くて安くて、お土産にもぴったりです。
実際に日本に帰るときに、お土産としていくつか買ってみました。
もちろん、誰にあげるかは慎重に選びましたよ(笑)。
一番人気だったのはイモムシ。
見た目はインパクトがありますが、香ばしくてクセがなく、スナックとしては一番食べやすいかもしれません。
オケラも意外とおいしかったと好評でした。
ただし、コオロギは独特の匂いが気になるという声もありましたし、
蚕の蛹は中からブチュッとした食感が出てきて苦手という人も。
昆虫スナックは栄養価が高く、特にたんぱく質やミネラルが豊富。保存も効くので、登山や非常食としても注目されているそうです。
でも、やっぱり見た目のインパクトが強いので、お土産にする場合は相手を選んでくださいね。
昆虫食の未来と展望
正直に言うと、私は昆虫そのままの姿が見えていると、どうしても食欲がわきません。
一度は勇気を出して味見をしましたが、リピーターにはなれませんでした。
でも、もし粉末にして混ぜられていたら、知らずに食べてしまうかもしれません。
それくらい味自体は悪くないんです。
私の友人の中には、コオロギの素揚げが大好きで、もち米と一緒に持ち歩いている人もいます。
以前、日本に帰る飛行機を待っているとき、空港のベンチで彼が当たり前のようにコオロギご飯を広げて食べていて、思わず二度見してしまいました。
正直、ちょっとホラー映画みたいな光景でした(笑)。
でも、地球環境のことを考えると、将来的に昆虫食がもっと当たり前になる日が来るかもしれません。
牛や豚に比べて飼育に必要な水や飼料が少なく、環境負荷も軽い昆虫は、持続可能なタンパク源として世界中で注目されています。
まとめ
今回は、タイの昆虫食の種類や屋台メニュー、そして日本人に人気のお土産や昆虫食スナックについて見てきました。
タイでは、ハチの子のような高級な昆虫から、コンビニで買える気軽なスナックまで、さまざまな昆虫食が楽しめます。
タイで昆虫を食べる文化は、決して変わったものではなく、伝統と知恵に支えられた自然な暮らしの一部です。
栄養価が高く、環境負荷も少ないとされる昆虫は、今や「未来の食材」として世界中で注目されています。
もしあなたが少しでも昆虫食に興味があるなら、タイは絶好の場所です。
タイを訪れる機会があれば、ぜひ市場や屋台でロッドゥアンや赤アリの卵に挑戦してみてください。
きっと、新しい味覚の扉が開かれますよ!